Junko Sasaki　「DARK GREEN」　　佐々木淳子　「ダークグリーン」
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　｢一番好きなマンガは?｣と訊かれ、いつも答 えるのが、これ。訊いた相手は知らないことが多い (＾＾；)。しかも、そう訊いてくるのは大抵なぜか漫画好きを自負している方々なので、反応が中々面白いです。
　『その日、全人類が同じ夢 を見 た』…という語りで始まるこの物語は、まさしく何かに憑かれたような奥深い、SF作品です。主人公は、全くサエない ｢美大浪人」の北斗くん。彼がこの、眠ったまま植物状態になってしまうことがある奇妙な異世界の夢“R-ドリーム”に入り込んだところか ら、偶然とも必 然とも思える凄まじい物語が回り始めます。
　“R−ドリーム”は戦いの夢です。そこで人類は、様々な形 態で襲ってくる悪夢｢ゼル｣と戦っています。ゼルは時 に巨大な虫であり、機械であり、雲であ り…食物の形をしていることさえあります。けれど、誰も｢ゼル｣が襲ってくる理由を、その正体を知りません。さらに同じ夢を見ていても、人により受け取り 方は様々で、入っていたこと自体すっかり忘れてしまう者もいます。ただR-ドリームで共通しているのは、「何か大きな災いが人類に降りかかって来ている」 ということ。また、｢夢の中で死ぬと現実でも死んでしまう｣と いう無視できない事態です。
　北斗くんの浪人仲間の一人も「R-植物患者｣となり、 そのまま帰らぬ人となります。それをきっかけとして、彼はR-ドリームに入り込み、謎の少年「リュ オン」と出会います。――夢の中でずば抜けて強い力を持つ彼は、北斗のように目覚めることなく、現実世界での記憶も持ちません。現実での ｢リュオン｣が誰なのか…北斗の現実での探索が始まります。

　｢リュオン｣は果たして何者なのか。｢ゼル｣はなぜ人類を襲うのか。そして「ダーク・グリーン｣とは…？

　連載当時、自然破壊をテーマとして扱った作品としても注目されました。のみでなく、物語の中には、宗教、戦いと平和、自己同 一性、正義と偽善、性別とジェンダー、“力”というもの…ありとあらゆる深いテーマが、漫画ならではの象徴的な形で織り込まれています。
　武器を無力化し、風を奏でる少女｢フィーン｣。開 けっぴろげな金色の肌の少女、ミュロウ。人のよい教 養人のR-ドリーム研究家、ドクター・バロー。北斗 ＝ホクトを中心に、登場人物がまた実に人間的で個性あふれていて、すばらしい。
　今考えても、何度読み返しても、すごい、としか言いようのない作 品です。
　
　読んだことのない方、文庫版だと美しい絵がつぶれてしまっているので、ぜひコミックスか新書版で！すばらしいSF作品です。私は日本 一だと思います。これを読まずしてマンガ好きを語らないでほしいと 思うほどです。
　…あ〜もぅ、とにかく何でもいいから読んでくれ!!