AKIRA KUROSAWA 黒澤明

「生きる」

 タイトルまんま、「生きる」ということについて、深く胸打たれる作品です。
 渡辺美里さんの歌に、「死んでるみたいに生きたくない」というのがあります。何と言いますか、表舞台の派手なニュースにはならないけれど、この映画の主人公のように生きている人たちがそろそろっとあちこちにいて、そういう人たちがいてくれるから、絶望せずに生きていられる。そしてまた、私もそういう人間の一人でありたいと、願っています。
 さらにこの映画は、人生というものは、最後の最後まで分からない、それこそ死の一週間前でも、一時間前でも変えることができるのかもしれない、と、そんなことまで考えさせてくれます。

「羅生門」/RASHO-MON

 私が二番目にまともに観た黒澤作品です。モノクロのこれ観た時、なるほど黒澤明はすごい監督なのだと納 得しました。
 すばらしく斬新なカメラワーク、凄まじい臨場感のある映像、テーマの面白さと深さ。
 そう、深さ。私は思春期の頃から、人間は各自違う、それぞれの認識の世界を生きているのだと感じていました。それは「他人と共有した、 同じ出来事に関する記憶の違い」から次第に理解されてきたことですが、最近では進歩した脳科学、脳医学の分野からも、そういうことが裏付けられてきている ようです(だからこそ共有することが大きな意味を持つわけですが)。
 そしてその「世界」は往々にして、エゴイズムに溢れている。けれどそれだけでは終らない、泣きたくなるほど生々しい「人間」の姿を、ものの見事鮮やかに 表現して見せた、心の底から「芸術だ!」と叫びたくなる、素晴らしい作品です。


「天国と地獄」/THE HELL OR HEVEN

 まだ子どもだった私が初めて観た黒澤作品です。衝撃でした。
 ある富豪を襲った誘拐事件。物語も最初の内は、犯人に共感さえ覚え。けれど、事実が明らかになるにつれ、事件の様相は途中から大きく変わる。
 そしてラストには、人間の幸せとは、本当の意味で人生に勝利するとはどういうことなのか、考えさせられるというよりは、心深く訴えかけられる作品だと思 います。
 登場する警察も頭が良いし、テンポも良いし、サスペンスとして一級品。とにかく面白いです。どうして、こういう話を考えられるかなー。すごいよ!

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